Chapter3         オイスターボーイの逆襲: ついにオイスターボーイの逆襲がはじまる。クリス・ランドクロスという男があらわれる。ゲルマンの人々が考えたように、この男は考える。


by sheep_newyork
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休止のお知らせ


オイスターボーイの逆襲は しばらく休止 いたします。

中止、ではなく 休止 です。

同時に、新ブログ 東京オルガスム をつくってます。

これまで読んでくれていた皆様、ひとまず、ありがとうございました。

また新ブログで、 復活したオイスターボーイ でお会いできることを楽しみにしています。


青山直樹



 オイスターボーイの逆襲(無断転載禁止)


 雨が降っている。グレンチェックのハットがよく似合っている男がいる。男は路地を複雑に進んだ後、駅のホームと密接した何もない空間、を跨いである広大な草の敷地にはいっていった。周囲には足の付け根まで伸びた雑草と、初夏の雨に濡れた蛙がいた。俺は蛙に こんにちは、 と会釈した。声にこそ出さなかったが、蛙は黙って俺を出迎えているようだった。足元には崩された石畳の破片が転がっていた。

 建物の外周は思ったよりも大きかった。古びた廃屋だが、それを囲む雑草の敷地を入れると、普通の家の四、五軒分の広さ、いや、冷静に考えればそれ以上の広大な面積だった。自分達の歩いてきた部分しかわからないが、もしかしたら、奥の竹林や、その奥に広がる暗闇も、全て

軒下からおしっこのように毀れる光と埃の揺曳する様を、左手の筋肉を視界の隅に入れながら眺めた。湿度の高さが光の柔らかさと鋭さを高めているようだった。蝉の声はまだ続いている。時折、風で竹林がかさかさと乾いた音をたてた。猫が歩いていたのかも知れない。俺は大きく深呼吸した。何か新しいものを見るような予感があったからだ。グレンチェックの男、は扉を開け、靴のまま中に入っていった。そこは文字通り、何もない廃屋で、赤いソファと、敷居のとられた板間が広がっているだけだった。少しマカロニ・ウェスタン風のつくりだ。

 二人分の足音を聴きながら、特には何もない部屋の、特には何ともない雰囲気にとりこまれていた。コツコツ、という定期的かつ不規則な音は、不手際なダンスみたいに響いていた。カン コツコツ、重なったり、単独で動く足音が耳朶の周縁を擦過する。ラウドスピーカーだったら踊れたかも知れない。俺はヘイ・ジュードとウォルティング・マティルダをほぼ同時に鼻歌で歌おうとして失敗した。鼻の穴は二つあっても、二つの歌は同時に歌えないのだ。人生は、一つ一つ丁寧に、そして複数のことができるようにはなかなかできていない。


Quotation - My literature COUNTERATTACK of OYSTERBOY
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# by sheep_newyork | 2005-05-09 16:59